役員報酬について

法人税

 こんにちは!税理士のきよです。

 今日は役員の報酬について、法人税で気を付けないといけないことについてです。

概要

 会社は経営者従業員によって構成されます。

 経営者(役員)と会社は委任の関係にあり、従業員(社員・アルバイト・パート等)と会社は雇用の関係にあります。

 役員は報酬、従業員は給与の形で会社から支給を受けます。

 支給される金額は役員の場合は株主が、従業員の場合は役員がその額の決定に大きくかかわることになります。

 役員は会社の経営につき株主から委任されているので、役員の身内以外(身内の取り扱いは別の機会で解説します)の従業員に支給するについては、役員と従業員の双方が合意しているものなので支給額が会計上の費用となり、法人税でも損金されます。

 ところが役員の報酬については一定の制限がかかります。

 本来会社は所有と経営の分離から、所有者である株主と実際に経営にあたる役員とは利益が相反した立場となり、相互にチェックすることにより会社の経営が健全に営まれることを予定しています。

 上場企業の株主総会をみなさんもテレビ等で目にしたり、実際に参加した経験のある方もいらっしゃると思います。

 上場企業の場合は何百人・何千人もの株主が総会の会場に集まり、そこで役員の選任・報酬をいくらにするかを議案として挙げ、株主から承認を受けることになります。

 各役員はそこで決められた報酬を来年の株主総会までの12カ月で割った金額が毎月支給を受けられる報酬として受け取ることになります。厳格な手続きによって決められ、基本的に1年間は増額も減額もできません。

 ところが中小企業の場合は全ての株式を社長が持っているというオーナー会社や、全部でなくても身内を含め発行済み株式の過半数を持っているケースが多いです。

 このような会社に株主総会の決議をもって報酬が決定するという原則をそのまま当てはめたらどうなるでしょう。

 今期は思いのほか業績が良いからこのままでは多額の法人税を納めなくなるから経費を作るために役員報酬を上げてしまおう。

 逆に業績が悪いから、あまり赤字が多いと銀行からの融資が難しくなる、報酬に係る所得税・住民税・社会保険料を下げたい等の理由から報酬を下げてしまおう。

 といった行為が容易にできることになります。

 会社の株主構成次第で利益操作が可能になってしまいます。これでは課税の公平が図れなくなることから制限が設けられてます。

 役員報酬につき隠ぺい仮装経理によるもの、不相当に高額な部分は損金に算入されません。

 それ以外の報酬についても次のいずれかに該当する場合のみに支給額が損金に算入されることになります。

  • 定期同額給与
  • 事前確定届出給与
  • 業績連動給与

 業績連動給与の規定が適用できるのは、その報酬額を算定する指標等を有価証券報告書に記載されていることが前提になります。

 有価証券報告書を作成する会社はまれな会社であることからここでの説明は割愛させていただきます。

定期同額給与

 定期同額給与とは、支給時期が一定の期間ごとであり、かつ、その事業年度内の各支給時期における支給額が同額であるものをいいます。

 具体的には次のようになります。

 事業年度が1月から12月までの会社だとします。

 通常は2月の中旬から下旬にかけて株主総会が開催されます。 

 前期は20万円だった社長の報酬を今期の3月分から30万円に増額したケースです。

 3月以降は来年の2月までこの30万円の額で支給し、基本的に事業年度の中途においての増額・減額は認められません。

 この支給額は総額ベースでもいいし、手取り額(源泉所得税や社会保険料等の控除後の金額)でもいいです。

  •  会計期間中におけるおける増減が認められパターンは
    • 株主総会のタイミング(会計期間開始の日から3月以内の改訂)
    • 職制上の地位の変更等
    • 著しい業績の悪化

 に限定されています。

 職制上の地位の変更とは、例えば、社長がいてその息子が一従業員として同じ会社で働いていました。社長が体調を崩され復職はきついのでこれを機に息子に社長の地位を譲り引退することにしました。

 一介の従業員として働いていた息子からしてみれば、社長などからの指示を受けてその指示通りに働いていたのに今度は指示する側に回り、会社の責任を一身に受けることになるから、今まで通りの給料というわけにはいきません。

 臨時株主総会を開き、社長人事の変更と新社長の報酬を決議することになります。

 著しい業績の悪化とは、例えば、当社の売上の70%を占めるお得意さんが倒産してしまい今後の会社の経営に重大な影響を及ぼすことが明らかな場合などです。

 単純に当初予想していた業績の見込みより良かった・悪かったでの増減は認められないのでご注意を。

 では仮に下図のように支給した場合どうなるのでしょう。

 2月の株主総会で3月分から30万円としたのに9月から減額が認められる要件を満たさなないのに15万円に減額したとします。(1・2月分は定期同額給与に該当しているものとします。)

 この場合、9月から12月に支払われた15万円部分が定期同額給与の額となります。

 3月から8月までに支払われた30万円のうち15万円部分は定期同額給与となり、残り30万円-15万円=15万円部分は定期同額給与以外の給与となり6か月分の90万円が損金不算入となってしまいます。

 この社長の年間の報酬は280万円となり、280万円は給与所得として所得税・住民税が課されます。

 損金に算入される給与であるなら給与を支払った会社の所得が同じ金額だけ減額されるので、結果法人に対して課される法人税・住民税・事業税が少なくなります。

 ところが4月から8月分として支給した金額のうち90万円が法人の所得の金額の計算上損金に算入されないことから、この90万円に対しては個人に対して課される所得税等と、法人に対して課される法人税等の両方が課されてしまうことになります。

 これこそもったいない税金です。

 国税庁のホームページに詳しいQ&Aなどが公表されています。

 事業年度の中途で役員報酬の増減を行う場合は、それらを参考に慎重におこなってください。

事前確定届出給与

 事前確定届出給与とは平たく言うと役員に支給するボーナスなどに関する規定です。

 夏季賞与・冬季賞与・決算賞与などいろいろな賞与がありますが、当然ながら支給されると支給があった月の報酬は前述した定期同額給与の額を超えることとなります。

 そこであらかじめ支給が決まっているものであればまえもって税務署に届出してくれれば損金として認めますよという制度です。

 具体的には事前確定届出給与に関する届出書という書類を提出することになります。

 納税地・法人名などいろいろ書くことあるのですが、最も重要なのは賞与を誰に何月何日にいくら支給するかを明らかにしておくことです。

 届出書を提出し、その内容通りに支給されたのであれば全額損金になります。逆に支給する時点での会社の経営状況等から届けた金額より多く支給、または少なく支給しても原則支給した全額が損金不算入になります。

 また注意点として提出時期が決まっています。

 原則として株主総会の決議後1カ月以内です。期限内に提出がないと無効となります。

 提出期限が中途半端になるので提出を忘れてしまいがちです。

 ちなみに私の場合は、法人税の確定申告書と一緒に提出しています。

 役員の職制上の地位の変更等によりの役員給与の報酬が変更され、それに伴い臨時に支給する報酬の定めをした場合には臨機改訂事由が生じた日から1カ月以内となります。

 同族会社の非常勤役員に年1回や2回というように支給のしかたが毎月でない支給も届出の対象になります。(非同族会社の場合は届出不要です。)

まとめ

 税理士が関与している会社ならチェックが入るから問題ないと思います。

 しかし、税理士の関与がなくご自身で決算申告をしている会社の方は気を付けてください。

 税務調査があったら問答無用で所得加算されてしまいます。

 悪気はなく、単に知らないだけでも結構なダメージを受けてしまいます。

 これを契機にちょっと調べておきましょう。

あとがき

 朝夕はだいぶ暑さが和らいできました。夏も終わりますね。

 なんとなく寂しくなるのはなぜ?

 ではまた!!

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