税務

所得税の確定申告で間違いやすいところ─医療費控除

こんにちは!!横浜の税理士のきよです。

今日は、所得税の確定申告で医療費控除を受けようとするときに間違えやすいところやよく質問されることについてです。

医療費控除制度についての勘違い

所得税での医療費控除という制度は、病気やケガなどで多額の治療費がかかってしまったとき、本来負担してもらわなければいけない所得税を減額してあげるという制度です。

たまに治療費の全部あるいは一部が返ってくると勘違いされている方がいらっしゃるのですが、あくまでも税金の負担を調整する制度です。

所得として所得税のかからない程度の年金所得しかなく、年金から源泉徴収されている所得税が0円の人は、治療費が仮に100万円かかっていても戻ってくる税金は1円もありません。

治療費自体の戻りがあるのは、健康保険の高額医療制度などで、税金ではなく社会保険の話になります。

医療控除の対象の範囲

医療費控除の対象になる医療費とは、病院や診療所での医師・歯科医師による治療費、助産師による分娩の介助、薬代などです。

美容代や人間ドックなどの健康診断費は該当しません。

美容代や検査費などは治療費を支払う必要性が薄く、お金をかけるかけないに選択の余地が多分にあるからです。

病気やケガを治すために支払わざるを得ない治療費が該当するとイメージしていただければわかりやすいですかね。

したがって、容姿を向上させるためを含め必要性がない不相当に高額の支払いとか、インフルエンザ予防接種等の予防や検査などにかかったものは除外されます。

今年度の申告の対象となる医療費控除は、平成31年1月1日から令和1年12月31日に支払われた医療費が対象となります。

12月27日に歯医者に行って治療してもらったんだけど、請求金額分の現金の持ち合わせがなかったので、年明けの1月5日にその支払いをしましたのような場合は該当しません。

ただしクレジットカードがあったので、現金ではなくカードで支払いを済ましたならOKです。

クレジット会社から医者等への支払いが完了していると考えるからです。

控除される金額

支払った医療費の全額が対象とはならない場合があります。

保険金等により補てんされた金額」は、医療費の額から引く必要があります。

例えば、入院して入院代として20万円支払ったんだけど、生命保険会社と入院特約を結んでいて、保険会社から入院給付金として10万円をいただいた場合は、支払った金額20万円から給付金10万円を引いた10万円が対象となります。

具体的な補てん金は、

  • 生命保険契約や損害保険契約に基づき医療費の補てんを目的として支払いを受ける医療保険金など
  • 社会保険や共済に関する法律などに基づき、医療費の支払の事由を給付原因として支給を受ける給付金
  • 医療費の補てんを目的として支払を受ける損害賠償金など

が該当します。

ただし、「傷害手当金」「見舞金」などは該当しません。

実は、この控除するものか、しなくてもいいものかの判断が税理士としても難しいところです。

出産があった時「出産育児一時金」や「家族出産育児一時金」は控除しなければいけないけど、「出産手当金」は控除しなくてもいい…??

ではどう対処するか。

私の場合、調べてもどうしてもわからないときは、支給をしてくれた役所や組合などの相手先に「この給付金は医療費控除から引くの?引かなくてもいいの?」と確認します。

支給をした相手方の方が事情をよく理解してますので。

また、入院費として20万の支払いをしました、保険会社から30万円の給付金をいただきましたといった場合、支払った金額は20万円・補てんされた金額は20万円、結果としてその入院のために支払った医療費は0円ですということになります。

20万円 − 30万円 = △ 10万円 とはなりません。

他の治療費や薬代から、この△10万円を控除する必要はありません。

補てんされた金額は、その給付の原因とひも付き(個別対応)で考えます。

足切限度額

医療費が10万円を超えてないと申告できないと勘違いしていらっしゃる人がいます。

(医療費の額) − (補てんされる金額) = 差引金額

この差引金額から足切限度額を引くことになりますが、この足切限度額は

  • 所得金額 × 5%
  • 10万円

いずれか小さい金額が足切限度額となります。

所得金額とは、

上の青く塗りつぶしたところの「合計」の欄の金額をいいます。

ここの金額が200万円以上であれば10万円となります。

仮にここの金額が100万円だとすると

①100万円 × 5% = 5万円

②10万円

①と②のいずれか小さい金額は5万円となります。

差引金額が9万円しかなく10万円はこえてなくても、上のような場合5万円を超えている部分の金額が対象となることから、9万円 − 5万円 = 4万円の申告ができるということになります。

10万円いかないからとあきらめてしまうのではなく、再検証する必要がありますよね。

同一生計なのに夫と妻で別々に申告しようとすると損しますよ。

例えば、夫と妻がそれぞれ医療費が20万円ありましたとします。

各々で申告すると、20万円 − 足切限度額10万円 = 10万円

夫と妻のそれぞれが10万円、家計全体で20万円の医療費控除を受けることができます。

でも夫か妻のどっちかにまとめたら、

(夫分)20万円 + (妻分)20万円 = 40万円

40万円 − 足切限度額10万円 = 30万円 となり家計全体で30万円の医療費控除を受けることができます。

別々で20万円より、合計して30万円の控除額の方が家計全体で10万円の所得が少なくなります。

所得が少なければ、その分税金の負担も軽くなるのだから、家計全体で考えるとまとめた方がお得ですよね?

じゃあ誰でまとめるの? 

所得税は累進税率(所得が多くなればなるほど税率が高くなる)で課税されるので、同一生計で最も所得の高い人でまとめて申告する。が一般的にもっともお得になります。

まとめ

  • 医療控除の対象 … 診療・治療・療養としての通常の対価。予防や健康増進を目的とするのは対象外。
  • 補てんされた金額は正しく引きましょう。個別対応なので他から引きすぎることがないように。
  • 足切限度額は10万円ではなく、所得の5%となる場合もありますよ。

いよいよ確定申告時期になりました。

仕事しているときに気になったりしたことがあったらその都度情報を発信していきたいなと思ってます。

ではまた!!

きよ

 横浜市を中心とした地域密着型の税理士事務所です。  法人設立、資金繰り、節税対策をど、主に法人の税務会計や経営のサポートを応援させていただいてます。  相互信頼のもと、クライアントが気軽に相談することができ、事務所は率直に意見を言うことができる、お互いが共存共栄できることを望んでいらっしゃる方を大歓迎します。    

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