Categories: 税務

税制改正について

 こんにちは。税理士のきよです!

3月期決算の法人の申告に追われ投稿が間延びしてしまいました(;^_^A

 さて今日のテーマは今年度の税制改正についてです。

 とはいえ、昨年の配偶者控除の改正に比べるとそれほど大きな改正はありません.
 気になった住宅ローン控除・個人事業者の事業用資産に係る納税猶予制度・ふるさと納税について語りたいと思います。

Ⅰ 住宅ローン減税について

 適用要件や控除される税額等は従来のとおりです。変更されたのは現行の住宅ローン減税の対象となる期間が3年延長され、現行最大10年が13年になったということです。

 今年の10月から消費税率8%が10%に引き上げられることに対する措置として特例の形で創設されました。

  この規定の適用が受けられるのは、
 ➀住宅の取得等に係る対価の額又は費用の額に含まれる消費税等の税率が10%である
  場合
 ➁平成31(令和元)年10月1日から平成32(令和2)年12月31日までの間
  その者の居住の用に供した場合
 の要件を満たしてある住宅の取得等です。

  11年目以降の各年において
 ➀建物購入価格の2/3%
 ➁住宅ローン年末残高の1%
  のいずれか少ない金額が税額控除されます。

 2/3% × 3年 =  2% だから、2%の増税分の負担を吸収してあげられるよねというかんじです。

 増税前の駆け込みや増税後の反動を緩和したいとの考えです。
 ここで住宅の取得等を考えられている方に一言。
 確かに仮に購入しようとする物件の家屋の価格が5千万円だとすると増税前と増税後では総額で百万円違うから、あわてる気持ちもわかります。
 しかしこの税制やすまい給付金の拡充などの対応政策も設けられているので、価格にもよりますが、前後どっちがいいかは一概には言えません。
 テレビやエアコンのようなものであれば5年位使って気に入らなければ買い替えするのは可能ですが、住宅は10年20年30年それ以上と長い間お付き合いしなければいけなく、簡単に買い替えというわけにいきません。
 消費税だけに気持ちが縛られると、後々後悔することになりかねないので、今一度本当にこの物件でいいのかよくよく考えて決断してください。

Ⅱ 個人事業者の事業用資産に係る納税猶予制度について

 2017年10月に公表された経済産業省の試算によると、今後10年間で70歳を超える全国の中小企業経営者は245万人と推計されるとのことです。
 経営者が60歳以上で後継者の決まっていない中小企業は日本の企業の3分の1にあたる127万社で、事業が継続できず廃業する企業の半分は黒字であり、このままだと2025年ごろまでには650万人分の雇用と22兆円分の国内総生産(GDP)が失われる可能性があると指摘しています。
 少子化や昔みたいに家業を継ぐという意識が低下しているのも背景にあるのでしょう。

 この危機に対応するため、昨年非上場株式等についての贈与税・相続税の納税猶予・免除の特例が創設されました。これを法人版とすると、今回のは個人事業者版というものです。

 この制度の対象となる「特定事業用資産」とはなんぞや、「個人事業承継計画」の提出・確認、円滑法の認定等々、要件など語り始めたらきりがないくらいの内容です。
 ここでは思い切って割愛させていただきますが、関心のある方は国税庁のホームページからパンフレットをダウンロードできますので、そちらを参照してください。

 制度の内容もさることながら、これは相続にも絡んでくるので、使いずらい制度だなぁという感想です。

 父(事業者)・母・息子1人(父の事業承継者)のパターンや、子供が複数人いても引き継ぐ事業用資産の価値が事業承継者の法定相続分以下のパターンであれば大丈夫かな思います。
 しかし法定相続分以下でない場合は後々もめそうかなぁ。
 例えば、父・母・息子2人で父の相続財産が現金1000万円・事業用資産1000万円だとします。父が亡くなりました、母が自分の取り分放棄し息子2人に公平に1000万円づつ分けることにしました。事業が黒字事業なら1000万円以上の価値があるし、赤字事業なら1000万円の価値がないことから、はたして本当に公平なの?母の今後の生活はどっちが面倒みるの? 
 母の今後の生活を考え、母現金500万円、事業を継ぐ息子事業用資産1000万円、継がない息子現金500万円で分けることにしました。母がこの500万円を残した状態で亡くなりました。この500万円が事業を継がない息子にすんなりいけばいいのだけれど、事業を継いだ息子から「おいおい、俺の取り分250万円あるんじゃねえ?」とか言ってきたら取集つかなくなります。

 この制度を利用しようとする場合は、後になって相続が争族にならないよう、関係者一同でよくよく事前の話し合いをしておいてください。

Ⅲ ふるさと納税について

 ふるさと納税については5月までは従来通りですが、6月からは総務大臣が一定の要件要件を満たすと認められる都道府県・市区町村をふるさと納税(特例控除)の対象として指定することなります。指定を受けていない都道府県等への寄付はふるさと納税の適用が受けられなくなるので注意が必要です。

 ふるさと納税は、地方で生まれ育ち都会に出てきた方が自分を育て、支え、一人前にしてくれたふるさとへの恩返し、あるいは頑張っている地方の自治体を応援したいという想いを税制で応援しようという趣旨から生まれた制度です。

 しかし現実には、返戻品目的で寄付・自治体においても地産品以外の返礼品の設定と本来の趣旨に合致しないものとなっています。そこで国は一定の制限を設けることとしたものです。

 批判覚悟で一言。ふるさと納税すると自分の住んでいる自治体の財源がその分少なくなります。自分の住んでいる自治体から本来受けられるであろう行政サービスがその分受けられなくなります。事実、ふるさと納税で税金が流失したため、保育施設の建設を断念せざるを得なくなった自治体もあるそうです。

 また、ふるさと納税は正常な市場取引を阻害するとの考えもあります。例えば、都会である果物を1万円で売って事業者がいるとします。同じ果物を返礼品として5千円位の支払いで得ることができるとします。返礼品を提供する自治体は地場産品だから本来その果物に上乗せされる中間マージンなどを省いて提供できます。みんながその果実を返礼品として得ようとしたら、事業者は売り上げが減る→利益が減る→都会の税収が減になってしまいます。

 単に返礼品目的でふるさと納税するのではなく、そのような様々な事柄を考え、じっくり熟慮した後でのふるさと納税をすることが、この制度の発展につながるのでは。この制度を良くするも悪くするも納税者・自治体の一人一人の行動次第であると考えます。

 では、また。

 


  

 

 
 

きよ

 横浜市を中心とした地域密着型の税理士事務所です。  法人設立、資金繰り、節税対策をど、主に法人の税務会計や経営のサポートを応援させていただいてます。  相互信頼のもと、クライアントが気軽に相談することができ、事務所は率直に意見を言うことができる、お互いが共存共栄できることを望んでいらっしゃる方を大歓迎します。    

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