こんにちは!税理士のきよです。
10月から消費税が増税となります。今日は税率の引上げと軽減税率についての解説です。
現在は8%の消費税率が10%になり、同時に軽減税率も導入されます。
現行 | 10月1日以後 | ||
軽減税率 | 標準税率 | ||
消費税率(国税) | 6.3% | 6.24% | 7.8% |
地方消費税率 | 1.7% | 1.76% | 2.2% |
合計 | 8.0% | 8.0% | 10.0% |
現行の8%も軽減率の8%も合計は8%で一緒ですが、国税と地方税の内訳が違うので、課税事業者の計算がけっこう面倒になります(-_-;)
具体的に中身を見ていきましょう。
軽減率が適用されるのは「飲食料品」と「新聞」の譲渡です。
飲食料品の譲渡とは「食料表示法に規定する食品」の譲渡をいい、「酒類」と「外食」を除き一定の要件を満たす「一体資産」の譲渡を含むとされてます。
人の飲料や食品に供されるものに軽減税率が適用されますが、次のように微妙な場合があります。
矢印の左側が軽減税率、右側が標準税率となります。
水道水は飲食用よりお風呂・洗濯・トイレなどで使われる量が圧倒的に多いから10%、ミネラルウォーターをお風呂・洗濯・トイレに使うのはあまり想像できないし、普通飲むか料理に使うでしょうということで8%。
では、飲食用で販売したのに栽培用に使われた種や、食品添加物として販売したのに清掃用につかわれた重曹はどうするのでしょう? これは売り手側が販売時点で食品かそれ以外使われるかの判断でいいことになってます。 種とか重曹とか売った後どのように使われるをか売り手側がいちいち追っかけることできないから当然と言ったら当然です。
酒類とは、「アルコール分1度以上の飲料」で日本酒・ビール・焼酎・ワインなどの一般的なお酒で、これらは軽減税率の対象になりません。ノンアルコール飲料はアルコール分が1度未満であるので8%。みりんや料理酒はアルコール分1度以上ということで10%、みりん風○○というような調味料は1度未満で8%となります。
テイクアウト・出前・宅配は軽減税率ですが「外食」は標準税率となります。
外食は、飲食料品の譲渡ではなく、「飲食設備のある場所で飲食料品を飲食させる役務の提供」と解されるからです。飲食設備は規模や目的を問わないこととされているので、折りたたみ式の簡易なテーブル、立食形式のカウンターも該当するので、それらの場所での飲食は外食扱いとなります。
ファーストフード店やイートインコーナーがあるコンビニなどでは店内飲食は10%、持ち帰りは8%となりますが、この場合はお客さんの意思確認で判断します。コンビニなどは店内に「店内で飲食される方はお申し出ください。」などを掲示したうえで、お客さんからの申し出により判断します。
飲食業以外でも、例えばカラオケ店での飲食、旅館等の宴会場での食事、ルームサービスによる食事も外食扱いになります。
ケータリングも外食になります。ケータリングとは「相手方が指定した場所で行う加熱・調理・盛り付け等の役務を伴う飲食料品の提供」をいい、役務提供があるから、出前・宅配のように単に飲食料品を届ける・引き渡すだけとは区分してます。ただし、ケータリングでも有料老人ホームや学校における給食は軽減税率が適用されます。
一体資産とは、玩具付きのお菓子などのように、食品と食品以外のものがあらかじめ一の資産を形成し又は構成しているものです。一体資産については、販売価格が税抜1万円以下で、かつ、価格の2/3以上が食品の場合は軽減税率、それ以外は標準税率となります。セット商品として仕入れた場合、商品を解体したりできないから、仕入先が適用した税率をその小売店等でもそのまま適用することができます。
医薬品や医薬部外品も標準税率となります。オロナミンCはジュースなので8%、リポビタンDは医薬部外品なので10%。うーん面倒くさい!!
新聞は簡単です。「定期購読契約」「週2回以上発行」の条件を満たせば軽減税率が適用されます。スポーツ紙や業界紙も2条件を満たせば軽減税率となります。
軽減税率が適用される売上げがある事業者は飲食料品と新聞を扱う事業者に限定されますが、仕入れ税額に関しては簡易課税を適用している以外の全ての課税事業者に関わってきます。
お客さんと食事にいったら10%、手土産なら8%。会議費として外食したら10%、仕出し弁当等を頼んで社内で食事したなら8%。会社での定期購読している新聞代は8%、出張時に駅売店で購入した新聞代は10%。などなど。
きちんと対応していけるように準備していかないといけませんね。
仕入税額控除の要件である請求書等の保存方式も現行の「請求書等保存方式」から「区分記載請求書等保存方式」に変わります。
現行の「請求書等保存方式」では以下の記載事項が記された帳簿と請求書等を保存しておかなければなりません。
帳簿 ➀相手方の氏名又は名称
②取引年月日
③取引の内容
④取引の対価の額
請求書等 ①作成者の氏名又は名称
②取引年月日
③取引の内容
④取引の対価の額(税込価額)
⑤受領者の氏名又は名称
「区分記載請求書等保存方式」だとどうかわるか。
帳簿③取引の内容に「軽減税率対象品目である場合には、その旨」が加わり
請求書等③取引の内容に「軽減税率対象品目である場合には、その旨」が加わり
④取引の対価の額(税込価額)が税率ごとに合計した取引対価の額(税込価
額)となるだけです。軽減税率対象品目がある場合にその事実を記載して
あることが必要になるということです。
この記載事項につき特例があります。追加された2つの項目が不備である領収書等を受け取った場合、相手方に正しいものを提出していただくのが原則ですが、特例として追加された2項目のみ購入者側で追記することができます。普通は会計書類などに追記するのは証拠書類の改ざんでペナルティの対象になります。しかし2項目だけは追記でも良いことにしています。あくまでも2項目だけですのでご注意を!
「区分記載請求書等保存方式」は令和元年10月1日から令和5年9月30日までで、令和5年10月1日からは「適格請求書等保存方式(いわゆる日本版インボイス)」に変更となります。「適格請求書等保存方式」については、まだ先の話なので別の機会にご説明します。
軽減税率制度は複雑なので、中小事業者については事務処理能力の不足からすぐに対応できないことが想定されることから、税率ごとの区分経理ができなくても納付税計算ができる特例が設けられました。なお特例ができる中小事業者は「基準期間における課税売上高が5千万円以下の事業者(=現行の簡易課税制度の適用事業者と同じ)」に限られます。
1.売上げに係る特例
令和元年10月1日から令和5年9月30日までの間については、その課税期間中の税込課税売上高の合計額に下記の①~③の割合を乗じて簡便的に軽減税率分の課税売上高を計算できます。
(算式) 区分できていない税込売上高の合計額 × ①~③のいずれかの割合
= 軽減対象税込売上高
①小売等軽減仕入割合
小売業と卸売業のみ適用できる割合。税込課税仕入高のうち軽減税率売上にのみ要す
る金額の占める割合を「小売等軽減仕入割合」として用いる方法。
②軽減売上割合(10営業日割合)
全ての業種で適用できる割合。課税期間中の任意の10日間について税率ごとに区分
し、その割合を「軽減売上割合」として用いる方法。期首から10日、期末から10日
その他期中のどこでもいいのですが、食品のバーゲン・セール等の通常の販売と異なる
イベントがある場合はその部分は除いて、つまり通常の事業状態での10日を抜き出す
ことにご注意ください。
③50%の割合
売上総額に占める軽減税率の売上高がおおむね50%以上の事業者のみが適用できる
割合。年間売上高の50%を軽減税率の売上高として計算する方法。
2.仕入れに係る特例
令和元年10月1日から令和2年9月30日の属する課税期間の末日までの期間で、
卸売業と小売業のみが認められる特例。先の売上に係る特例の①小売等軽減仕入割合と
真逆の考え方で、区分経理できていない税込仕入高の合計額に、課税売上高の総額のう
ち軽減税率の税込課税売上高の占める割合を乗じて「軽減対象税込仕入高」を求めると
いう方法です。
3.簡易課税制度の特例
簡易課税制度の適用を受けるためには、適用を受けようとする課税期間の初日の前日
まで届出書を提出するのが原則です。ただし、令和元年10月1日から令和2年9月
30日までの日の属する課税期間は、届出書の提出日の属する課税期間から簡易課税制
度を適用することができる特例が設けられました。
課税期間開始後に区分経理ができていないことが判明した場合などは、その課税期間
の末日まで届出書を提出すれば簡易課税制度で仕入税額計算ができることになります。
ただし、その後は簡易課税の2年縛り、簡易課税をやめようとするときは、やめよう
とする課税期間の初日の前日までに不適用の届出書を提出する等は原則通りの取り扱い
になりますのでご注意を。
増税まであと3ヶ月余り。そろそろ準備していかないといけませんね。
我々の業界も今後研修等が頻繁にあると思うので、また有用な情報等があったら順次アナウンスしていきます。
ではまた!!