法人税法における収益について

法人税

 こんにちは!税理士のきよです。

 今日は、法人税における収益について解説します。

 平成30年度改正により法人税法第22条の2が新設されました。
 法人税法第22条では、収益とは、益金の額に算入すべき益金とは、というようにそれぞれの意義とか範囲を定めています。22条の2においてはその計上時期金額について規定してます。この条文の追加は収益認識に関する会計基準の適用指針の公表によるもので、従来の会計基準を採用する法人と新たな会計基準を採用する法人とでの課税の公平を図るためです。

 監査対象法人は新たな会計基準に準拠しなければなりませんが、それ以外の法人は実質的に従来通りに考え方で大丈夫です。ただし、「返品調整引当金」「長期割賦販売等に係る延払基準」も同時に廃止になっていますので、採用している法人の方はお気を付けください。

 収益認識の原則は「資産の販売若しくは譲渡又は役務の提供(以下「資産の販売等」という)に係る収益の額は、その資産の販売等に係る目的物の引渡し又は役務の提供の日の属する事業年度に益金の額に算入する」です。コンビニでお客さんジュースをレジに持ってきてお金を払ってくれた時、床屋さんで髪の毛をカットしお客さんから代金を受け取った時などに認識するよというのはわかりやすいですよね。

 メーカーさんならどうでしょう?
①出荷基準…出荷した日
②検収基準…得意先が検収した日
③使用収益開始基準…得意先で製品等を実際に使用収益できることとなった日
等々がありタイムラグが生じますがどれでもOKです。

 その他、委託販売・試用販売・予約販売・不動産仲介・斡旋報酬・技術役務の提供等いろいろな取引形態がありますが、その法人の所得を計算するにあたりもっとも合理的と認められる方法であれば、どの基準を採用するかは会社の任意です。

 しかし、メーカーさんの例でいえば、時系列的に①⇒②⇒③という流れでは①より②、②より③が収益認識が遅くなります。今期は売り上げ伸びていないから従来採用していた③から①に変更しようとか、その逆で、今期は売り上げがありすぎて税金の負担が重くなるから①から③に変更しようというのは利益操作になるのでNGです。一度採用した方法は変更する合理的な理由がない限り変更はできません。継続適用が原則です。

 22条の2の第1項の引渡基準として収益認識の原則とし、第2項において例えば契約効力発生日基準・仕切書到来基準・検針日基準等による近隣する日をもって収益として経理することも認め(権利確定基準)、第3項において申告調整することも認められるという計上時期について明文化されました。

 第4項においては益金の額に算入すべき金額が規定されています。「その販売若しくは譲渡をした資産の引渡しの時における価額又はその提供をした役務につき通常得べき対価の額に相当する金額」いわゆる「時価」です。「時価」とは第三者間で取引されるとした場合に通常付される価額をいいます。ここの価額又は通常得べき対価の額につき貸倒れや買戻しの可能性がある場合でもその可能性を考慮しないでくださいということが第5項で規定されてます。

 商品の引渡し等は済んでいるけど、販売価格が確定していないときはどうしましょう?
 販売価格は合理的な見積もり額で売上計上します。合理的な見積もりとは、
 ①その商品等と同種のものが一般に取引されている場合…期末において通常取引される価額等
 ②その商品等と同種のものが一般に取引されていない場合…期末に最も近い時期に販売された価額等、相手との交渉時における仮の価額等
 となります。

 実際に確定した金額が見積額と異なった時は、その確定した事業年度で処理することになります。基本的に見積額を計上した事業年度の申告書につき修正申告や更正の請求する必要はありません。ただし、売上を不当に調整するためなどと合理的な見積もりと認められない場合は、当然遡っての更正決定事由になります。

 売上の計上が前期以前に行われたものである商品等について返品があった場合には、返品の通知を相手から受けた日返品を受け入れた日の属する事業年度に売上高等から控除します。販売した事業年度に遡って修正したり、返品の可能性に基ずく見積計上することは認められません。

 売上値引きや割戻しをした場合のその計上時期は、
 ①値引き・割戻しの内容等が契約や取引慣行等によって相手方に明らかにされていること又は引渡し等を行った事業年度終了の日において内部的に決定されていること
 ②過去の実績等による合理的な方法で継続して適用されている方法により見積り、その見積りに基づき算定されていること
 ③①及び②の証拠書類が保存されていること
 のすべての要件を満たす場合は、引渡し等を行った事業年度。それ以外の場合は、値引き・割戻しを行った日の属する事業年度で計上することになります。

 収益について決算時に気を付けていただきたいこととして
 ①決算日前後の出荷伝票・納品書控・請求書控・領収書控等の資料から、取引月日・金額を確認し当期に計上すべき金額が正しく計上されていますか?
 ②期中現金主義で経理されている場合、期末の売掛金の計上漏れはありませんか?
 ③預り金・借受金・前受金等の負債科目に売上として計上すべき金額はありませんか?
 ④副産物等の売却益、自家消費などの収益事項の計上漏れはありませんか?
 ⑤返品・値引き・割戻しは適切に処理されていますか?
以上は最低限チェックしてくださいね。

 ではまた!!

 

 

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