こんにちは!税理士のきよです。
今日は、法人税の決算・申告について、特に申告初心者を対象に解説したいと思います。 日本は3月決算の法人が多いので、この5月に申告しなければならない法人の経営者や経理担当者の方にとって多少なりとも参考になれれば幸いです。
Ⅰ、決算・申告事務の大まかな流れ
ザクっと上記のような流れになります。それでは順に説明していきます。
Ⅱ、試算表の作成
当期の期中に行われた取引につき、現金出納帳・預金出納帳・売上帳・仕入帳・手形記入帳・経費帳・売掛金元帳・買掛金元帳などの帳簿に正しく記入されているかを確認します。
正しく記入されていることを確認したら、仕訳帳にて仕訳を起こし、総勘定元帳を作成し、総勘定元帳から決算整理前試算表を作成します。
Ⅲ、決算調整
決算調整とは、イメージとして今期の所得に帰属するものと、来期以降に帰属するものに分別するという作業です。法人税は当期の所得に課税する税金なので、まず当期の所得を正確に計算しなければなりません。
例えば、当社が3月決算法人だとして、売上先の得意先様と月末締め翌月10日に入金する契約をしているとします。2月分の売上は3月10日に入金されるので、入金日をもって売上処理(「現金主義」といいます)でいいのですが、3月分の売上は4月10日になることから、この3月分は「売掛金」として当期の売上として処理(「発生主義」といいます)として計上しなければなりません。
また、当社が駐車業を借りているとしましょう。家賃や駐車場代などは当月に翌月分を支払うのが現在の取引慣行になっています。2月に支払ったのは3月分なので支払い時に費用処理しておけばいいのですが、3月に支払ったのは4月分なので当社はまだ駐車場に駐車するというサービスを受けていません。したがって、3月に支払った4月分の駐車料は「前払費用」として計上しなければなりません。
つまり、期中は現金の受け払いから収益や費用として会計処理してもいいのですが、決算月は現金の受け払いを伴わない取引でも、当期に収益や費用を認識しなければならない事項については、正しく当期の収益または費用として認識する必要があります。
以下の事項を確認することで、当期に帰属するもの、来期以降に帰属するものをふるいにかけます。
ここで気を付けなければならないのは、減価償却資産・繰延資産の償却費の計上と引当金・準備金の処理は決算調整としなければその後損金として認められなくなります。
Ⅳ、決算書類等の作成
上記の決算調整をもとに決算修正仕訳を起こし、決算整理後試算表を作成します。
決算整理後試算表をもとに、貸借対照表・損益計算書・株主資本等変動計算書・注記表・事業報告書が作成されることになります。
Ⅴ、株主総会の承認
作成された貸借対照表・損益計算書・株主資本等変動計算書・注記表・事業報告書(以下「財務諸表」と略します)を株主総会において承認を受け、その承認をうけた財務諸表をもとに法人税の申告書が作成されます。これを「確定決算主義」といい、ここで確定した財務諸表は今後変動することはなく、その後誤りなどがあった場合は財務諸表ではなく、法人税の申告書において調整されることとなります。
Ⅵ、申告調整
当期に帰属する所得を整理して、上記の財務諸表が作成されたのだから、この財務諸表に計上されている所得に税率かけて税金額を決定すればよさそうなものですが、ここから申告調整という面倒くさい手続きがまってます。
公平な税負担や政策目的のため、財務諸表で算出された所得金額を適正な課税所得に調整する手続きを申告調整といいます。
企業会計上の「収益」を法人税では「益金」といい、企業会計上の「原価・費用・損失」を法人税では「損金」といいます。「収益」と「益金」、「原価・費用・損失」と「損金」はほぼ一緒なのですが、一部が法人税法の規定で「別段の定め」として定められている部分が一致しないこととなります。
この一致しない部分を法人税の申告書において「加算」「減算」することにより法人税の課税標準となる課税所得が計算されることとなります。
減算するものとしては、「受取配当金」「損金にならない税金の還付金」などがあり、加算するものとしては、「法人税、法人住民税などの税金の納付」「寄付金・交際費等の損金不算入額」「償却費・引当金の限度額を超えた金額」などがあります。
また、調整事項には、「任意的調整事項」と「必須的調整事項」の二つがあります。
「任意的調整事項」には、
などがあり、「必須的調整事項」には、
などがあります。「任意的調整事項」は文字通りやってもやらなくても法人の自由で、適用したいなら申告書において必要事項を記入したうえで申告してください。「任意的調整事項」は税金の減額など法人にとって有利な事項なので積極的に活用してください。
「必須的調整事項」は文字通り必ず申告書において調整しなければならない事項で、記入ミスとかあると税務署から修正を求められ、修正しないと更正決定を受けます。
Ⅶ、確定申告書の作成
法人税の確定申告書として作成する書類は、法人税の確定申告書(別表・財務諸表・勘定科目内訳明細書)、確定申告書別表1のOCR用紙、法人事業概況説明書があり、租税特別措置法の適用(中小事業者の低率税率、30万円未満の減価償却費の損金算入など)の適用を受けた場合は適用額明細書(消費税の課税事業者なら消費税確定申告書も)を作成。法人税の申告書をもとに、県税事務所には法人県民税及び法人事業税の申告書、市町村の役所には法人市民税の申告書を作成することになります。
Ⅷ、申告・納付
上記の申告書は原則として決算日から2ヶ月以内にそれぞれの役所にそれぞれの申告書を提出し、それぞれの申告書に納付すべき金額の記載があるときは、その税額を決算日から2ヶ月以内に納付することとなります。
以上ザクっとした流れを書いてきましたが、内容が多いだけに一回で伝えるのは無理です。また、別の機会に説明したいと思ってます。
では、また!