日本政策金融公庫の融資制度について

経営

 こんにちは。税理士の三浦清勝です。

 今日は事業の資金繰り対策としての融資制度についてお話したいと思います。

 商売を始めるとき、今行っている商売での設備投資・人材への投資、新たな分野への新規投資などなど、商売をするにはいろいろとお金がかかります。

 それらのお金を自己資金で賄えれるのであれば問題ないのですが、自営業や中小企業にはなかなか厳しいものです。

 上場企業なら色々な資金調達方法がありますが、自営業や中小企業の場合は金融機関等からの借り入れが現実的な方法とならざるを得ません。

 大手の銀行などは融資条件のハードルが高いのですが、今回紹介する日本政策金融公庫は自営業や中小企業に比較的やさしいので、日本政策金融公庫についてお話したいと思います。

Ⅰ 日本政策金融公庫の概要

 日本政策金融公庫は、旧日本生活金融公庫・旧農林漁業金融公庫・旧中小企業金融公庫が株式会社日本政策金融公庫としてまとまり、国民生活事業・農林水産事業・中小企業事業を支援している政府100%出資の政策金融機関です。

             融資先数1件あたりの平均融資残高
 日本公庫
国民生活事業
87万社 703万円
 信用金庫
(261金庫)
113万社  3,971万円
国内銀行計 (202万件)
202万社  9,873万円

 

 上の表は平成29年度末現在のもので、融資の状況を示してます。

 日本政策金融公庫は以下の5つの特徴をアピールしてます。

① 幅広い融資対象…個人事業主・法人企業問わず、すでに事業を営んでいる方はもちろん、これから創業される方もご利用いただけます。

② 様々な資金の使いみち…開業資金・設備投資・商品仕入・求人費や人件費などにも利用できます。

③ 無担保・無保証人の融資制度を取扱い…平成29年度の事業資金(直接扱)のうち14.5%が不動産担保等となってますが、残りの85.5%は無担保融資となってます。

④ 利息は固定金利…借入時の金利が完済まで変わりません。

⑤ 沖縄県を除く全都道府県に152支店の支店を設けてます。

 上記からもわかるように日本政策金融公庫の融資は小口の無担保融資を主体としてます。

Ⅱ 既存事業者への融資審査のポイント

 ここからは日本政策金融公庫による融資制度のセミナーに参加した時の情報をもとに話を進めます。

 既存事業者への融資審査のポイントは、①安全性、②収益性、③成長性の3点から融資の不可や融資額を決めるそうです。

 ①安全性は、貸借対照表の資産の部から不良債権や資産価値の著しい下落した資産などすべての資産の実質価値を再評価し、負債の部から代表者からの借入金や未払いの税金・社会保険料の有無を調べ再評価し、再評価した資産の部の合計額から再評価した負債の部の合計額を差し引き、純資産がいくらになるか計算します。プラスならとりあえず〇、マイナスだと✖と評価されます。

 ②収益性は、損益計算書から売上とその原価から売上利益率(原価率) 、販売費及び一般管理費の役員報酬、減価償却費、その他の経費、雑収入・雑損失の内容等から利益金額を再計算します。その後その利益金額に減価償却費を加えた金額を返済財源とし、返済余力がどのくらいあるのかを検証します。単に損得ベースだけでなく、キャッシュフローベースとの両面で検証します。その結果、十分返済が可能と判定すれば〇、返済に窮するだろうと判定されると✖ということになります。

 ③成長性は、文字通り将来どうなるのか今後の見通しです。将来成長すると見込まれれば〇、見込まれなければ✖と判定されます。

 ①②③がすべて〇なら融資の相談に応じやすいとのことです。①又は②が✖、あるいは①②とも✖でもあきらめないでください。③がしっかりしていれば絶対に融資しないこともないそうです。現在はこうだけど、将来はこうなるという明確なビジョンと経営計画、そのことを客観的かつ具体的な根拠を示して説明していただき、納得すれば融資にお応えできるとのことです。

 基本中の基本ですが、税金や社会保険料に未納があると、日本政策金融公庫のみならず、すべての金融機関に共通で融資を受けられません。税金を払うための融資はまず応えてもらえません。税金も払わない人は、民間から借りたお金なんてまず返してくれないと判断されます。くれぐれも税金はしっかり払っておいてください。

Ⅲ 創業融資審査のポイント

 次に、新たに事業を開始しようとする方への融資審査のポイントについて説明します。

 事業実績がなく財務データがなく、取引実績がないから信用情報もありません。「経営者としての能力」と「ビジネスプラン」で評価するそうです。

 資格の有無・創業動機とキャリアの整合性・経験年数・人脈の有無・自己資金の備蓄状況・計数観念や債務観念の有無などのその人の仕事のキャリア・人生経験をもとに「経営者としての能力」が評価されます。

「ビジネスプラン」は特に収支計画が重視されます。創業時の収支予測は過大評価になりがちなので、客観的な収支予測を行い、整合性のない収支見込は排除した計画書か否かで評価されます。しっかりとした計画書を作成しましょう。

 ちなみに、自己資金の備蓄状況の関連で開業時において必要な資金の1/3以上の自己資金として用意しておいて、不足分を融資を受ける人はだいたい事業が成功しているとの統計があるみたいで、自己資金率も融資の際の目安のひとつにしているそうです。

Ⅳ まとめ

 日本政策金融公庫の融資は、いままで説明してきた一般の融資の他にも、得意先が倒産したなどの事態になったときに連鎖倒産を防ぐためのセーフティネット貸付や、経営革新(新たな事業活動)などを行おうとしている方への特別貸付制度も設けてます。

 資金繰りに困ったらとりあえず相談してみましょう。相談料はとられませんから。

 ということで、今日はここまで。

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