売上原価について

法人税

 こんにちは!税理士のきよです。

 今日は前回の売上げに対応するところの「売上原価」についての解説です。

Ⅰ 売上原価の算出方法

 売上原価は次の算式によって求められます。
 売上原価 = ① 期首棚卸高 + ② 当期仕入高 - ③ 期末棚卸高

 ①の期首棚卸高は前期の決算から正しい金額で繰り越されているはずなので、ポイントは②の当期仕入高と③の期末棚卸高となります。

 企業会計においては原価を算出するための棚卸資産の評価方法は、それぞれの法人の実態に即したいくつかの評価方法を定めており、選択は法人の任意とされてます。当然どの方法を選択するかによって原価の額が異なることになります。

 しかし法人税においては、そのような任意の選択は、課税所得の計算上恣意的な選択を認めることになり、課税の公平を欠くことにつながるので、別段の定め(法人税法第29条)により法人が選択できる棚卸資産の評価方法につき定めを設けています。

Ⅱ 棚卸資産とは

 そもそも棚卸資産とは何でしょう。棚卸資産とは、商品・製品その他の資産で棚卸をすべきもの(有価証券、短期売買商品を除く)をいい、具体的には次のものをいいます。

 ➀ 商品又は製品(副産物及び作業くずを含む)
 ② 半製品
 ③ 仕掛品(半成工事を含む)
 ④ 主要原材料
 ⑤ 補助原材料
 ⑥ 消耗品で貯蔵中のもの
 ⑦ その他上記に準ずるもの 

Ⅲ ②当期仕入高─取得価額について

 上記②当期仕入高の計算の基礎となる購入または自己が製造等をした棚卸資産の取得価額は次のように計算されることになります。

 (1)購入の場合  
   ① 購入先に支払った代金
   ② 引取運賃・荷役費・購入手数料・関税その他購入のために要した費用(付随費
     用)
   ③ 検収費・選別費・買入事務費等の「販売の用に供するために直接要した費用」
    (付随費用)

 (2)自己が製造等をした場合
   ① 原材料費・労務費・経費
   ② 販売の用に供するために直接要した費用(付随費用)

 (3)贈与・交換により取得した場合
   ① 取得した棚卸資産の時価
   ② 付随費用

    ※ 少額な付随費用で重要性の乏しいものは、取得原価に算入しないことができ
     ます。重要性の判断として「3%基準(付随費用の合計額が購入代価の概ね3
     %以内の少額なもの)」が適用されます。

 上記により計算された金額が当期仕入高や当期製品製造原価のもとになっていきますが、次のようなことに気を付けてください。         

 例えば、同じ自動車でも販売目的で購入したなら棚卸資産ですが、営業などで自社が使用する場合は固定資産に該当します。製造した機械装置でも販売するのであれば棚卸資産ですが、自社が使用するのであれば固定資産となります。仕入れ先に支払った代金に差入保証金が含まれていれば、その差入保証金は固定資産となります。

 その他、返品や値引き等については、注文書控・納品書・請求書・返品仕切書控などの資料から確認し適正な仕入れ高を計上してください。

Ⅳ ③期末棚卸高

 期末棚卸高は次の算式で計算されます。

 期末棚卸高 = 棚卸数量 × 単価(1単位当たりの評価額)

 棚卸数量は、事業年度終了の時に実際に棚卸を行って数量を確認する方法(実地棚卸法)と商品有高帳のような受払帳等により把握する方法(帳簿棚卸法)、両方法の併用があります。

 実地棚卸は絶対行わなければいけませんが、小売業のように多品種・多数量を扱っている事業者は帳簿法は無理でも、決算時のみならず期中に定期的に実地棚卸することが望ましいです。逆に、工務店や中古車・貴金属販売業のように取り扱う品目が少量である場合は、帳簿法と実地法を併用することにより減損等などを把握することが、税務上だけでなく経営上も必要な手続きであると思います。

 数量が確認出来たら、次に単価の決定です。

 単価の決定のために選定することができる原則的な評価方法は、「原価法」「低価法」に分けられ、原価法は更に下記の6つの方法に区分されることになります。

①個別法      個々の期末棚卸資産について実際の取得価額をもって評価する方法
②先入先出法    期末に一番近い時期に仕入れたものから順に残っているものとして
         期末の評価額を計算する方法
③総平均法     期首棚卸資産の取得価額の総額と期中に取得した棚卸資産の取得価
         額の合計額をこれらの総数で除したものを期末の評価額とする方法
④移動平均法    棚卸資産を取得するつど加重平均単価を算出し、期末に最も近い日
         における加重平均単価を期末の評価額とする方法
最終仕入原価法  その事業年度の最後に取得したものの一単位当たりの取得価額を期
         末棚卸資産の一単位当たりの評価額とする方法
⑥売価還元法    棚卸資産をその種類等又は差益率の異なるごとに区分し、その区分
         の同じものについて、期末棚卸資産の販売予定価額(売価)から、販
         売によって通常生ずべき差益率によって還元して得たものを期末の評
         価額とする方法

 上記のいずれかの方法により計算された金額が原価法による期末評価額となり、低価法とは、原価法による期末評価額と事業年度終了の時における時価(正味売却価額等)とを
比較し、いずれか低い価額をもって棚卸資産の期末評価額とする方法をいいます。

 原価法・低価法にかえて特別な評価方法を選定することもできますが、所轄の税務署長に申請書を提出し承認を受ける必要があります。

 評価方法は、その営んでいる事業の種類ごと、かつ、上記Ⅱ棚卸資産とはで記述した区分ごとに選定することができます。例えば、飲食業を営んでいる法人が主要原材料は移動平均法で、補助原材料は総平均法で評価するという方法です。

 会社設立時等に特に選定方法の選定をしていない場合は、最終仕入原価法による原価法により評価することになります。ただし、評価方法の変更は可能です。変更しようとするときは新たな評価方法を採用しようとする事業年度開始の日の前日までに所轄の税務署長に変更承認申請書を提出し承認を受ける必要があります。

 変更をしようとする場合は提出期限の間違いのないように気を付けてください。翌期から変更しようと思っているのに、当期の法人税の確定申告書と同時に申請書を提出したら、承認を受けても翌期からではなく翌々期からの適用になってしまいます。

 また、決算時における注意点として、実地棚卸を行う際、決算日や直前時に発注した商品等は決算日に棚卸を行っても、運送中であったりして事務所・店舗・工場等に届いてなければ計上漏れになる恐れがありますので、これも注文書控・納品書・請求書等の書類を精査しご確認してください。

 ではまた!!

 

PAGE TOP
タイトルとURLをコピーしました