こんにちは!税理士のきよです。
今日は、前回まで減価償却の流れで「修繕費と資本的支出」についてです。
減価償却資産は長年使用していると物理的に劣化したり、機能が減少してきます。
廃棄・除却して新しいものと取り換える方法があります。
でもまだちょっと修理すれば使えそうなら、もったいないから修理して使うのが普通だと思います。
修理代を支出時に修繕費として全額を損金にできればいいのだけれど、そうはいかない場合もでてきます。
例えばこんなケースを考えてみてください。
あなたは他人に賃貸させているマンションの一室をもっているオーナーだとします。今まで住んでいた方が引越しして退去されることになりました。
新しい入居者の募集をするにあたり、部屋の傷んだ床・壁・天井・設備等を一通り直し、他人に貸し出せる状況にしなければなりませんよね。
以前に貸し出していた状況までの修理ならいいのですが、「今期はちょっと儲かっているからキッチンを思い切ってシステムキッチンにしてしまおう。そうすれば家賃も今までより高く設定できるかも?」と考え、システムキッチンにしたとします。
もともとシステムキッチンなんてなかったのですから、修理するそもそもの対象がないので修理というより新たな資産の取得と考えるのが妥当です。
この新たな資産の取得と認められる部分を「資本的支出」とし、修繕費として一時に費用にしないで、減価償却資産として複数年にわたって減価償却として費用にしてくださいということです。
資本的支出の具体例としては
が通達で例示されています。これらのパターンだけでは網羅できないので、「修理・改良費のうち固定資産の使用可能期間を延長させ、価値を増加させるものである場合の、その延長及び増加させる部分が資本的支出です。」と説明しています。つまり、
長く使えるようになった
新しい機能がついた
が資本的支出ということです。
一方の修繕費とは、「その固定資産の維持管理や原状回復のために要したと認められる部分の金額」と定義してます。つまり、
破損したものを直す
劣化した部品などを交換する
をすることにより壊れたりする前と同じ状況にまで戻すという部分の金額となります。
とはいえよくわからないですよね。
修繕費になるかどうかの判定は修繕費、改良費などの名目によって判断するのではなく、その実質によって判定します。言っていることはなんとなくわかるけど、実際どうやって判断すればいいの?
そこで次のフローチャートがひとつの目安となります。
上のフローチャートについて解説します。
20万円以内であれば修繕費で大丈夫です。
少額だし、この金額を修繕費or資本的支出に分けるのは、分ける方が大変!!
部品などの入れ替え等でおおむね3年周期で定期的に行われている修繕等はわざわざ分けなくてもいいです。
例えば、10年使っている機械装置があります。モーターが壊れてしまったのでモーターを交換しました。30万円かかりました。技術進歩は日進月歩で進んでます。10年前よりもモーターの性能が良くなっているから、10年前と同じレベルのモーターを探す方が大変だと思われます。モーター以外の部分も劣化しているので、そのうちあっちこっちで不良が発生し、結局は買い替えなどが必要になるから、そのモーター入れたからといって試用期間が100%伸びたとも言いきれません。
このように修繕費か資本的支出が判別不能の場合の判断基準です。明らかに資本的支出と認められるものにはこのルールは使えません。
修繕費の金額が、修繕の対象となった減価償却資産の前期の決算の所得価額の10%未満であるなら、修繕費でいいですよというルールです。
例えば取得価額300万円の自動車について行った修理代の金額が30万円未満であるなら、その修理代は修繕費として取り扱っていいですということです。
支出した金額のうち
のいずれか少ない金額を修繕費として、残りを資本的支出として処理するというやり方を継続して適用しているときは、そのやり方を認めますということです。
ここまでで判定できないものは、それが修繕費か資本的支出は、その実質により判定することになります。
税務調査の時、修繕費か資本的支出かでもめるときがあります。
面倒くさいから資本的支出!!でも構わないですが、なるべくなら税金の支払いは遅い方が会社にとってはいいことなので、ある程度知っておいた良いのではと思います。
では、また!!