こんにちは!税理士のきよです。
最近顧問契約したお客様からの質問で
「えっ!!チャージは経費にならないの?!」
という質問を受けたので、「チャージ」についてまとめてみました。
例えば、先月の電気料金(20,000円とします)を電力会社に支払うことを考えてみましょう。
振込用紙が送られてきて、振込用紙で支払うのなら、支払時に
水道光熱費 | 20,000 | / | 現金 | 20,000 |
と仕訳します。
銀行引き落としで、預金残高が不足していたら、まず銀行に預け入れして
普通預金 | 20,000 | / | 現金 | 20,000 |
その後引き落とされ
水道光熱費 | 20,000 | / | 普通預金 | 20,000 |
と仕訳するのが普通だと思います。
電気料金は先月に電気を使用させていただいた、つまり電気を供給してもらったという役務提供に対する対価です。
チャージの場合はどうでしょう? 電車・バスなど使うときにいちいち料金を支払うのが面倒なので、利用時に自動的に引き落としてもらうためにチャージしているだけで、チャージした段階では何も役務提供を受けていません。
だとすると
銀行の口座に預け入れに行ったのと
旅客事業者にお金を預けたのとは同じではない?
交通系ICカードはとても便利なもので、電車・バスの運賃だけでなく、コンビニ・ドラッグストア・駅中の売店…等々いろんなお店で、いろんなものを買うこともできます。
ということは、「チャージ = 旅費交通費」とは限りませんよね?
コンビニで買ったパンツも旅費交通費としてもいいの?
実際に利用した時に、その用途に合わせた仕訳が必要なのでは。
では、どのように会計処理したらいいのでしょう。
日付 | 入 | 出 | 残額 |
12/1 | 現金 | 5,000 | |
12/2 | A | B | 4,800 |
12/2 | B | A | 4,600 |
12/5 | C | D | 4,000 |
12/5 | D | C | 3,400 |
12/6 | 物販 | 400 | |
12/11 | 現金 | 5,400 | |
1/15 | A | B | 5,200 |
1/15 | B | A | 5,000 |
まずICカードのご利用明細を用意します。ご利用明細に合わせ旅費交通費精算書をExeelでフォーマットする方法があります。フォーマットはネットでダウンロードすることもできます。
私の場合は精算書とか作るのが面倒なので、ご利用明細に上記のようにプライベート分はマーカーを付けておいてます。またチャージした都度まとめて処理することにしています。
C・D間の交通費1,200円がプライベートで使った交通費で、物販3,000円は取引先への贈答品とします。
チャージ日 | 12月1日 | 仮払金 | 5,000 | / | 現金 | 5,000 |
精算日 | 12月10日 | 旅費交通費 | 400 | / | 仮払金 | 400 |
接待交際費 | 3,000 | / | 仮払金 | 3,000 | ||
事業主貸 | 1,200 | / | 仮払金 | 1,200 |
この段階で仮払金勘定は、5,000 - 400 - 3,000 - 1,200 = 400
となり、ご利用明細書の12月10日現在(明細書の表記では12月6日)400円と一致!!というように処理しています。
チャージごとではなく、月ごとでもOKです。主に車で移動しているから交通系ICカードはほとんど使わないなら3月ごと、6月ごとでまとめても、決算時に精算されていればOKです。
チャージ日 | 12月11日 | 仮払金 | 5,000 | / | 現金 | 5,000 |
年度末 | 12月31日 | 前払金 | 5,400 | / | 仮払金 | 5,400 |
翌年度期首 | 1月1日 | 仮払金 | 5,400 | / | 前払金 | 5,400 |
年度末(決算日)で仮払金勘定の残高を前払金勘定に振り替えているのは、仮払金勘定だと気持ちが悪いだけのことです。
仮払金のまま、あるいは貯蔵品勘定を使うなどでも構わないと思います。大事なのは、家計費(プライベート分)と経費を分別していること。経費も適正な勘定科目で処理しているということです。
法人であるなら事業主貸を貸付金勘定あるいは仮払金勘定のままで、速やかに精算して、プライベートな部分を解消しておけばいいだけのことです。
ご利用明細書を用意するのが面倒くさい!という人に限って不思議とチャージの領収書はしっかりもってくるんですよね。
ご利用明細書の印字にかかる時間は1分もかかりません。私は駅で次の電車の発車までの待ち時間とかを利用してます。
また、スマホで表示できるアプリもあります。要は習慣づけだけの問題なので、印字の習慣をつける努力はしましょう。
どうしても面倒なら、経費となる交通費のみに使うカードとその他に使うカードの二種類を用意し、経費となる交通費のみに使うカードに関しては、
チャージ時に 旅費交通費/現金 として処理し、
決算時に未使用分を 仮払金/旅費交通費 と振替仕訳するという方法もありです。
ただし、「100%経費となる交通費にしか使ってないから調べたいなら調べていいですよ。」位に徹底しなければなりません。
ご利用明細にマーカーをつけて保存でもいいのですが、ご利用明細が消費税法上の請求書等に該当するか微妙です。
消費税の納税義務者で原則課税の適用をしている方は、旅費交通費精算書を作っておいた方が無難だと思います。
また、交通費以外で買い物をした時のレシートや領収書は買い物した時に必ずもらって保管です。
ご利用明細では何を買ったのかわからないので、その損金性が不明です。消費税法上も請求書等になるので、レシート・領収書がない場合は仕入れ税額の控除が受けられなくなり、税負担が増えてしまいます。
このレシート・領収書の取り扱いはくれぐれもご注意を!
レシート・領収書があるからついつい(経費)/(現金)と仕訳をしてしまいがちです。
でも、ご利用明細から(経費)/(仮払金)と処理しているとしたら、同じ経費を現金と交通系ICカードで重複して落とすことになります。
この場合、架空経費の計上ということで脱税になります。実際は一回の支払いしかしていないのに二回支払ったことにしてしまっているからです。
実際に支払った金額に対しての経費勘定の違いは、支払の事実から解釈の違いの問題で済みますが、実際に支払ってもいないのに支払った形にすると重いペナルティーを課されます。
くれぐれもご注意ください。
現実的には交通系ICカードの件で税務調査で何らかの否認を受けたということを聞いたことありません。逆にチャージ時に旅費交通費/現金の処理で是認されたということも聞いたことありません。
税務調査は限られた時間の中で処理しなければいけないので、旅費交通費まで手が回らないのが実情だと思います。
説明してきたことが原理原則だと思います。
知らないがゆえに無駄な税金の支払いをしてほしくないからのアナウンスです。
夏なのに全然暑くありません。反動がないことを願っている今日この頃です。
ではまた!