こんにちは!税理士のきよです。
先日「働き方改革関連法」についての研修を受けました。
その中で特に従業員を雇用している経営者の方に知っておいてもらいたいことをまとめてみました。
新聞やテレビなどで「働き方改革」という言葉は最近よく耳にしますよね。
正直、私も研修を受けるまでは「フ~ン」程度の関心しかありませんでした。
しかし、中小企業のクライアントを抱えている私にとって、早急に対応しなければならない事項もあることから、自分なりに調べ、まとめることにしました。
そもそも「働き方改革」って何でしょう。
[出典] 総務省 平成28年版「情報通信白書」
上図は日本の人口の推移を示しています。
総人口は2010年をピークに減少に転じ、2060年には9千万人を割り込むと推計されています。
逆に高齢化率は徐々に上昇し2060年には40%になると推計されています。
注目すべきは15~64歳の労働力人口です。1995年には8000万人を超えていた労働者人口は2060年には約半分の4400万人となってしまいそうと推計されているということです。
今後予測される深刻な労働力不足に対処しておかないと、国全体の生産性や国の経済力が著しく低下することになります。
そこで政府は、一億総活躍社会の実現に向け、現行の労働環境を大きく見直すという取り組みをすることとしました。この取り組みを「働き方改革」と呼んでます。
深刻な労働力不足を解消する対応策として次のことが考えられます。
働いていない女性や元気な高齢者のために働きやすい環境を整備し、労働市場に参加してくれることにより労働者(働き手)を増やす。
将来の働き手となる子供を増やす。
[出典]公益財団法人日本生産性本部:労働生産性の国際比較2018
労働生産性とは、労働者1人当たりが生み出す成果、あるいは労働者が1時間で生み出す成果の指標です。残念なことに、日本はOECD加盟国の全35か国中22位、主要7か国中最下位です。
労働者の人数の低下を労働生産性の向上で補っていく必要があります。
上記のように労働力不足の問題を解消するための3つの対応策を具体化するには、現行の労働環境の問題点を分析する必要があります。その分析より3つの柱を設けました。
長時間労働による過労死は、件数としては減少傾向にあるものの、依然として少なくはありません。
ITツールの積極的な活用などで業務の効率化を図り、労働者が心身ともに健康な状態での就業こそが生産性の向上につながります。
有給休暇制度・「時間外労働」の定義の明確化など労働時間に対する規制を厳しくすることにより、「労働者にとって働きやすさの実現」を図ることとしました。
今後、企業は人手不足から、多様な雇用形態により幅広い人材の活用をしていかなければなりません。
ところが現行は、正規・非正規の雇用形態の違いによる経済格差は周知のみなさんも知っての通りです。
雇用形態の違いだけで待遇に格差があるのはおかしく、公正な待遇を確保することが、働く意欲のある労働者が主体的に多様な働き方を選択できます。
また、企業にとっても多様な働き方の提供こそが企業にとって必要な労働力の確保につながります。
そこで雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保をするため「同一労働同一賃金」が制度化されました。
元気で働く意欲のある高齢者には、定年延長・再雇用制度・就業の斡旋などによる就労環境の整備が必要です。
また、在宅勤務・時短勤務などにより出産・育児・介護などの問題を抱えている労働者への就業機会、副業・兼業を推進することによるキャリアアップの実現なども柔軟な働き方の実現に向けた取り組みとして必要になります。
長時間労働の解消、正規・不正規の不合理格差の解消、柔軟な働き方の実現の3つの柱を盛り込んだ労働基準法、労働契約法といった8つの法律が改正解消となる「労働基準法等の一部を改正する法律案」が2018年6月29日に成立しました。
労働基準法等の改正のなかには大企業のみならず、中小企業にも関わる事項もあります。
是非知っていおいていただきたいことを列挙します。
この義務は業種や規模を問わずすべての使用者に適用されます。
年次有給休暇が年10日以上付与されている労働者には、使用者が時季を指定して年5日取得させることが義務付けられました。
具体的には、
①労働者からの申し出…労働者が自由に取得するもの
②計画的付与…労使協定で取得時季を定めて与えた日数
①②でも5日に満たないのであれば
「あなたはこの日に年次有給休暇をとって休んでください。」と使用者が時季を指定し、年5日の年次有給休暇を取得させる義務が使用者に課されることとなりました。
今までは、年次有給休暇を付与しなければいけない義務はありましたが、取得率が低いという現状を改善するため、取得日数についての義務も使用者に課すこととしました。
違反した場合、罰則として30万円以下の罰金が課されます。
年次有給休暇制度の関係で、「年次有給休暇管理簿」を作成し、3年間保存しなければいけないこととなりました。
長時間労働の問題を解消するため、時間外労働の上限に関して厳しく規制することとなりました。
原則として労働基準法では、1日8時間、週40時間の法定労働時間を超えて労働させること、1週1日(又は4週を通して4日)の法定休日に労働させることを禁止してます。
しかし現実的には残業等しなければ仕事が終わらないのが実情です。
そこで、使用者と労働者が協定を結び、時間外労働・休日労働に関する書面を労働基準監督署に届出をした場合、時間外労働・休日労働をさせることができました。この協定を労働基準法第36条に基ずく協定であることから「36協定」といいます。
従来はこの36協定に時間に関し法定された上限時間はなかったのですが、今回の改正で
①1か月45時間・1年360時間(休日労働含まず)
②直前2~6か月平均が80時間以内(休日労働含む)
③単月100時間未満(休日労働含む)
の上限となる時間が設けられました。
また、業種によってはいわゆるかきいれどき(我々税理士業務なら3月の個人の確定申告時期)で上記の36協定では対応が不可能というように、臨時的な特別な事情がある場合に限り、年間6回まで原則である月45時間を超えて労働させることができることとしました。
これを「特別条項つき36協定」といいます。
この場合においても
①1年間720時間(休日労働含まず)
②直前2~6か月平均が80時間以内(休日労働含む)
③単月100時間未満(休日労働含む)
④1か月45時間を超える特例適用の回数は年6回程度
の上限となる時間が設けられました。
労働時間の上限規制は中小企業は2010年4月からの適用となります。
この上限規制に違反した場合、6か月以下の懲役又は30万円の罰金が課されます。
前記の労働時間との関係で、労働安全衛生法の改正により、健康管理の観点から、タイムカード・ICカード・パソコンのログなどによる客観的な方法や自己申告などによる適切な方法をもって、労働時間の状況を把握することが義務付けられました。
管理監督者、裁量労働制が適用される人を含め、すべての労働者が対象となります。
なお労働時間の状況の記録は3年間保存しなければなりません。
労働安全衛生法の改正により1カ月の時間外労働が80時間を超え、疲労の蓄積が認められる労働者が申し出た場合、事業者は医師の面接指導を実施しなければいけません。
上記の4つのルールは、時間外労働の上限制限のみ中小企業の適用が2020年4月からですが、他は全て2019年4月からの適用になります。
働き方改革についての概要等について要約してみました。
該当すること、気になることがありましたら下記の厚生労働省の「働き方改革 特設サイト」にて詳しく解説されています。
是非ご参考に。
税理士会等による研修会はとても助かります。特に税法以外のことについてはなおさらです。
労働法などは自分から積極的に勉強することはないと思います。
ありがたやありがたや。
ではまた!!